プジョー407の乗り心地・走行性など
乗り心地
プジョーのサスは、俗に「猫足」と言われています。
プジョーはこのアイデンティティを踏襲するために、ショックアブソーバーまで内製化している数少ない自動車メーカーです。ただし、うちの407の「スポーツ」というグレードに限っては、サスを電子制御するために国産のカヤバ製アブソーバーが使われています。
肝心の乗り心地については、さすがに「雲の上を飛ぶ」とまではいきませんが、「AUTO」モードにしておけば、タイヤのサイズやスペックに拘わらずゴツゴツ感がほとんど無く、同乗者からの評判はすこぶる良好です。ソフトな乗り心地なのに、不快な車体の上下動が最小限に抑えられているので、長距離走行しても疲れません。
ただし、リアサスは路面の継ぎ目などで多少ショックを拾います。重たいV6エンジンを積んでいるフロントに比べてリアは重量も軽くてオーバーハングも短いので、どうしても乗り心地面では不利になります。極端に寝かせたアブソーバーの形状もあるのか、ショックを吸収する初期の段階で、少し固さを感じることがあります。
純正装着されていたタイヤはピレリーP7でした。P7はあまり設計が新しくないので、もっと違うタイヤにすれば印象が異なるかも知れませんね。
静粛性
静粛性に感しては、「車格に見合った性能」と言うか、「スポーティな外観から想像される以上の性能」を感じさせます。
さすがにセルシオやレクサスのような訳にはいきませんが、クラウン程度の静粛性は持ち合わせているように思えます。通常の速度域で巡航している限りでは、ロードノイズ以外ほとんど聞こえてきません。
エンジン性能・ミッション
V6 3000ccのエンジンは、シトロエンとも共通のものです。
数値的には特に突出した性能ではありませんが、低回転から高回転まで、どの回転域でもパワーに物足りなさを感じることはほとんどありません。1.6tを超える車重なのですが、もっと軽量なクルマを運転している感覚です。
アイシン製の6速ATはシフトショックも少なく優秀なんですが、低速では割と低いギアで引っ張る設定になっています。50km/h以下では4速までしかシフトしてくれませんし、70km/h以上にならないと6速にシフトしません。
このためキビキビ走行するには俊敏で良いのですが、ゆったりジェントルに走りたい時には、エンジン回転が高めになったりエンジンブレーキが効き過ぎるのが気になります。
信号だらけの渋滞している道路では、マニュアルモードを使った方がスムーズに走行できます。もう少し走行状況に応じたシフトスケジュールになってくれると良いんですが。。。。
エンジン音は室内・室外とも静かですが、低回転では爆発音や排気音が静かな分だけ、「ごわごわ~っ」というメカニカルノイズの方が気になります。
ただし、2000回転を超えてくると「クォーン」という心地よいサウンドに変わります。
ハンドリング・ブレーキ
407のハンドリングは、ちょっと独特だと思います。
質実剛健なドイツ車に比べると、ノーマルモードではとても柔らかく感じるサスペンションです。
でも、コーナリングが見劣りするか?というと、そんなことはありません。
「ちょっとスピードが速すぎたかな?!」というスピードでコーナーに突っ込んでしまっても、最初は少しグラッとしますが、その後は車体がジワ~ッと沈み込んで、スルスルっと軽やかにコーナーリングしてくれます。
長いフロントオーバーハングに重たい6気筒エンジンを積んでいるというのに、タイトコーナーも意外なことに得意です。
車重に比べて、それほど高性能なタイヤを履いている訳ではありませんが、常識的な速度域であれば、コーナーリングに不安を感じることはまずありません。ダブルウィシュボーンの足周りは伊達じゃありませんね。
ステアリングはパワーアシスト量が大きくて、拍子抜けするくらい軽い操舵力です。
このため市街地では「楽ちん」で良いのですが、慣れないうちは余分に切り込んでしまい戸惑いました。速度を上げた時くらいは、もう少しアシスト量を少なくして欲しい気がします。
ブレーキは大きなディスクのおかげで、効きはとても良好です。17インチのホイールは伊達ではなく、この大きなブレーキディスクをカバーするためのミニマムサイズなんです。
しかし、マスターシリンダーは左側のままなので、運転席のブレーキペダルから助手席まで太い鉄製パイプが通してあり、このパイプが助手席側のマスターシリンダーを押すという仕組みです。
この機構のために、ブレーキペダルの微妙なタッチがうまく伝わりません。
パッセンジャーの人達にも快適なブレーキングは、最初強めに踏んで、速度が落ちてきたら徐々に踏力を緩めて、停まる直前にはすっと踏力を抜くのがセオリーです。
ところが407でこのブレーキングを行おうとすると、微妙な力加減がうまくマスターシリンダーに伝わらず、「かっくんブレーキ」になってしまうことがあります。
折角の高級車なのに、もう少し何とかして欲しかったですねぇ。。。。
高速走行性
3Lの排気量なので、高速道路でも常識的な速度であれば、パワーに不満はありません。
ただし、緩やかに加速しようとアクセルをゆっくり踏み込んだ程度では、ATはシフトダウンしてくれません。せっかく6速もあるのですから、アクセルワークに応じて、すっと5速にシフトダウンして欲しいですね。
サスペンションは「AUTOモード」のままで高速走行すると、轍や路面の荒れや横風などで少しフラれることがあります。国産車的な走行性で、以前に乗っていたオペル・ベクトラのガチッとした直進安定性に比べると、ちょっと物足りませんねぇ。。。。(-_-)
しかし、サスペンションを「スポーツモード」にすれば状況は一変します。
シャキッとした乗り味に加え、荒れた路面でも車体の方向性が乱れることはありません! 路面の追従性もぐっと良くなって、格段に安心感がアップします。
これこれ! 高速はこうでなくっちゃ! この乗り味はドイツ車に似ていますね。 (^_^)v
取り回しなど
車幅が1m84cmあるため、裏道などの狭い道路ではちょっと気を遣います。スーパーの狭い駐車場などは、停めにくいし隣のドアパンチが恐いので、停めたくありませんね。
ただし前後長は短いので、慣れれば意外に問題はありません。大きな窓のおかげで視界が良いことも安心感に貢献しています。
前後のコーナーセンサーを上手に駆使すれば、結構狭いところでの切り返しも大丈夫です。
居住性
スタイリング重視のデザインなので、全ての定員がゆったり広々! というわけにはいきません。
特に後席スペースは車格の割に前後長がそれほどありませんし、前席のシート下につま先がしっかり入らないので、足元が少々狭く感じます。でも、シートは座面も背もたれも大きくて、柔らかい座り心地は応接間のソファー風です。(笑)
前席はすこぶる快適です。
シート位置が低いにもかかわらず、ダッシュボードが低くてフロントウィンドウ下端はう~んと遠くにあります。サイドラインも低くて視界が開けているので、狭っ苦しさなんてみじんも感じません。
シートはドイツ車ほど固くありませんが、ちゃんと腰がありますので、長時間座っていても疲労しません。特にサイズは座面も背もたれもた~っぷり大きくて、気持ちまでおおらかになってきます。
助手席の家内は、あまりに気持ち良さに「あぐら」をかいてみましたが、座面が大きいので余裕で「あぐら」もかけます。(笑)
静粛性も乗り心地も優れているので、特に助手席の家内はにはとっても好評です!
ただし運転席の足元は、車幅の割には左右幅が狭いん感じです。左足のフットレストも、もう少し幅が広いと、もっとゆったり運転できるんですが。。。。
装備
407は国内販売されているプジョーの中では最上級車なので、装備は充実しています。
9エアバックやESPなどの安全装備は勿論のこと、サスペンションの切り替えやマニュアルシフトモードなど、走行性能をアップする装備も充実しています。
オートエアコン、オートワイパー、オートライト、ヘッドライトのオートレベライザー、とオートずくしです。(笑)
バンパーに取付付けられたコーナーセンサーも、結構重宝します。
HDDナビやオーディオも、標準装着だというのに、なかなか高級品が使われてます。
シートヒーターも装備した革張の電動シートやリアのサンシェードなど、パッセンジャーに高級感を抱かせる演出はなかなかのものです。
一方、内装のプラスチックの質感や、合わせ目などの精度は「並」のレベルです。
この点では、例えば国産のマークXなどの方が上ですねぇ。